この記事は、配偶者の不倫相手に直接会って話したい、謝ってほしい、誓約書を書いてほしい、相手の職場や家族に知らせたい、と考えている人に向けたものです。先に結論を書きます。本当のことでも、広め方によっては刑法の名誉毀損になりうる。慰謝料を請求する権利があっても、迫り方によっては恐喝や強要になりえます。会う前に、何のために会うのかを決め、弁護士に間に入ってもらう道も比べてください。題名の 4 つは、会う前に決めておく目的・同席・記録・高ぶったときの決め方。誓約書や職場、名誉毀損のことは、そのあとの節で条文と一緒に書きました。 相談の件数は、当サイトが 2026 年 3 月 21 日から 2026 年 9 月 26 日までの投稿を数えたもので、2026 年 9 月時点の値です。条文と判決は原文で確かめました。
不倫相手の相談 96 件で、いちばん多いのは気持ちのこと
当サイトの集計で、不倫相手とのことを相談した投稿は 96 件でした。無作為に抜いた 30 件を AI(Claude)の 2 系統で判定し、判定がそろった件のうち本当に不倫相手とのことの相談だった割合(適合率、約 72%)で補正した数です。人の目では確かめていません。
いちばん多い悩みの型は「気持ちをどう整理するか」。2 番目が「費用や金額、相場のこと」、3 番目が「相手が認めない・応じないとき」です。 その下に「どこに頼むか、どう選ぶか」「何から、どの順で進めるか」「法律のうえでできるのか」が続きます。3 番目から 6 番目までは、隣どうしがほぼ同じ件数です。
お金の話より先に、気持ちの話が来る。相手に会いたい、謝ってほしいという思いも、ここにつながっていると当サイトは読んでいます。 眠れない、食べられない、相手のことが頭から離れない、という状態が続くなら、先に体を守ってください。心療内科や精神科、自治体の心の相談窓口があります。 厚生労働省が案内する「こころの健康相談統一ダイヤル」は 0570-064-556 で、受け付ける曜日と時間は都道府県ごとに違います。通話料がかかり、050 で始まる IP 電話からはつながりません。
内容証明・示談・誓約書の相談 57 件
当サイトの集計で、内容証明・示談・誓約書の相談は 57 件でした。悩みの型ごとの件数が公開の下限に届かないので、どの悩みが多いかの並びは出していません。 慰謝料の請求の順番や内容証明の働きは慰謝料の請求の記事にまとめました。この記事では、不倫相手と向き合うときの法律の線に絞ります。
会う・連絡する前に確かめる 4 つ
相手に会うこと自体を勧めも止めもしません。決める前に、次の 4 つを書き出してください。
1. 何のために会うのか。謝罪か、事実の確認か、関係をやめる約束か
目的で、会い方も残し方も変わります。謝ってほしいのか。事実を認めてほしいのか。配偶者と今後会わない約束がほしいのか。慰謝料を請求したいのか。 相談の中では、会わない・連絡しない約束を「接触禁止」と呼ぶこともあります。約束を書面にしたいなら、下の誓約書と示談書の節を先に読んでください。
2. 誰が同席するか。間に弁護士を入れる道はないか
1 人で会うのか、配偶者を同席させるのか。直接会わずに済ませる道もある。弁護士に代理人として入ってもらえば、自分で相手と話さずに進められます。 請求を考えているなら、会う前に弁護士に一度話しておくと、何を言わない方がいいかも聞けます。
3. 何を記録に残すか
会ったなら、日時・場所・同席者・話したことを、その日のうちにメモに残しておく。相手も記録を取っているかもしれません。 あなたの言葉も、あとで読み返される記録になる。そう考えて話す内容を決めておくのが無難です。録音するかどうかと、その扱いも、弁護士に先に聞いてください。
4. 感情が高ぶったらどうするか
いちばん危ういのはここです。怒りのまま「職場に言う」「家族に知らせる」「払わないなら広める」と口にすると、下の節で書く脅迫・強要・恐喝の条文が定める形に近づきます。 言いたいことを紙に書いて持って行く。高ぶったら席を立つ。会う前に、その場を切り上げる決め方をしておいてください。
本当のことでも名誉毀損になりうる。刑法 230 条
相手の職場や SNS、共通の知人に不倫のことを知らせたい。その前に、刑法 230 条の原文を読んでください。
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。(刑法 230 条 1 項)
条文が挙げるのは 3 つ。「公然と」「事実を摘示し」「人の名誉を毀損した」ことです。そして「その事実の有無にかかわらず」とあります。230 条では、本当のことかどうかは、罪になるかどうかの分かれ目として書かれていません。法テラスは、名誉毀損罪は他人の社会的評価を傷つけるような具体的な事実を「不特定または多数の人に」公にした場合に成立する、と説明しています。「公然」の意味そのものは、条文には書かれていません。
例外を定めるのは 230 条の 2。
前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。(刑法 230 条の 2 第 1 項)
罰しないとされるのは、公共の利害に関する事実であること、目的がもっぱら公益を図ることにあること、真実だと証明されること、がそろった場合です。 2 項は起訴されていない人の犯罪行為の事実、3 項は公務員や公選の候補者の事実を扱う規定です。私人どうしの不倫がこの例外に当たるかを定めた言葉は、条文にありません。この記事では判断しません。
事実を示さない悪口にも条文があります。
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。(刑法 231 条)
相手を責める言葉を SNS に書く。人前でののしる。これも侮辱罪の定める形に近づきます。 誰に、何を、どう伝えたら当たるのかは、事情で変わります。知らせることを考えているなら、伝える前に弁護士に聞いてください。
民事では民法 709 条と 723 条。賠償を求められる側になることも
刑事の罰とは別に、民事の責任もあります。民法 709 条は、故意または過失で他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に賠償の責任を負わせる条文。 慰謝料の請求の根拠になる条文と同じものです。710 条は、名誉を侵害した場合も、財産以外の損害を賠償させる条文です。
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。(民法 723 条)
法テラスは、社会的評価を低下させる具体的な事実を不特定または多数の人に公表されたときは、不法行為として損害賠償や差止めを請求できる、と説明しています。 公共の利害に関する事実で、もっぱら公益を図る目的があり、真実と証明されるか、真実と信じる相当の理由があるときは、不法行為にならないとされる、とも書いています。 プライバシーの侵害にも、損害賠償や差止めの請求がありうる。法テラスはそう答えています。
つまり、慰謝料を請求する側だったはずが、広めたことで請求される側にもなりうる。不倫相手への請求と、相手からの請求が、別々に立つ形です。
権利があっても恐喝になりうる。昭和 30 年の最高裁判決
「払わないなら職場に言う」。こう迫る場面で関わるのが、脅迫・強要・恐喝の条文です。どれも刑法にあります。
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の拘禁刑に処する。(刑法 223 条 1 項)
強要罪です。害を加えると告げる対象に「名誉」が入っています。3 項で未遂も罰すると定めています。 害を加えると告げて脅すこと自体は 222 条の脅迫罪で、2 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金です。 お金を払わせる場面は 249 条の恐喝罪で、「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」とあります。財物のほか、同じ方法で財産上不法の利益を得たり、他人に得させたりした場合も同じです(2 項)。250 条で未遂も罰します。「恐喝」の意味を定める言葉は、条文にはありません。
請求する権利があれば許されるのか。昭和 30 年 10 月 14 日の最高裁判決(昭和 27(あ)6596)は、こう述べています。権利を持つ人がそれを実行することは、権利の範囲内で、方法が社会通念上一般に忍容すべき程度を超えない限り違法ではない。 けれども、その範囲や程度を超えれば違法となり、恐喝罪が成り立つことがある。事件は借金の取立てで、応じなければ身体に危害を加えるような態度を示したものでした。
昭和 29 年 4 月 6 日の最高裁判決(昭和 27(あ)6260)もあります。恐喝罪で告げる害は、それ自体が違法である必要はない、としました。犯罪の事実を捜査機関に申告すること自体は違法でなくても、それをたねに畏怖させて口止め料を出させれば恐喝罪になる、という事件です。
どちらも不倫の事件ではありません。あなたの言い方がこれらに当たるかは、この記事では言い切れません。 ただ、「請求する権利がある」ことと「どう迫ってもよい」ことは別だと、判決ははっきり分けています。請求の伝え方は、弁護士と決めてください。
誓約書と示談書。脅して書かせた書面は取り消されうる
示談は、法テラスの説明では、裁判手続によらず当事者の話し合いで、支払うかどうかや金額・方法を合意して、民事上の解決をすることです。合意書(示談書)には、当事者の住所と氏名、作った日、何の件か、支払いの額・期日・方法、守られないときの取り決めを書く、とあります。 誓約書の決まった書き方を示す公的な資料は、当サイトでは確かめられていません。今後会わない約束などを書面にするなら、示談書と同じく、何の件で、何を約束し、守られないときにどうするかを書くことになります。
書いてもらう過程にも線がある。脅して書かせれば、上の 223 条の「義務のないことを行わせ」る形に近づきます。民事でも、民法 96 条 1 項は「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と定めています。取り消された行為は初めから無効だったものとみなされます(121 条)。 苦労して書いてもらった書面が、あとで効かなくなることがある、ということです。書面の中身と作り方は、弁護士に見てもらうのが確かです。
連絡をやめてほしいときの行き先
配偶者と不倫相手の連絡をやめてほしいなら、上の誓約書や示談書で約束してもらう道があります。慰謝料の請求と同じ話し合いの中で決める形もある。弁護士に代理人として入ってもらえば、自分で相手と話さずに進められます。
反対に、不倫相手からあなたへの連絡が続いたり、待ち伏せされたりすることもある。ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)2 条 1 項は、「つきまとい等」をこう定めています。
特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
行為の相手には、恋愛感情を向けた本人だけでなく「その配偶者」も書かれています。各号に並ぶのは、待ち伏せ、住居や勤務先に押し掛けること、拒まれたのに続けて電話やメールを送ること、など。 ただし、恋愛感情などを満たす目的があることが要件です。あなたの件で相手の行為が当たるかは、条文だけでは決まりません。
法テラスの説明では、不安を覚えさせるつきまとい等が行われ、繰り返されるおそれがあるとき、警察は相手に警告ができ、公安委員会は禁止命令を出せます(ストーカー規制法 4 条・5 条)。 身の危険を感じているなら、まず警察へ。電話で相談するなら、全国共通の警察相談専用電話 #9110 があります。発信した地域の都道府県警察の総合窓口につながり、携帯電話からも使えます。ダイヤル回線と一部の IP 電話からは使えません。
| したいこと・起きていること | 原文が言っていること | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 相手の職場や SNS に知らせたい | 公然と事実を摘示して名誉を毀損すれば、事実の有無にかかわらず罰する(刑法 230 条)。例外は 230 条の 2 の場合 | 弁護士・法テラス |
| 相手を責める言葉を書き込みたい | 事実を示さなくても、公然と侮辱すれば罰する(刑法 231 条) | 弁護士 |
| 知らせたあとの民事の責任 | 損害賠償(民法 709 条・710 条)と、名誉を回復する処分(723 条) | 弁護士 |
| 「払わないなら広める」と迫る | 強要(223 条)・恐喝(249 条)。権利があっても方法が程度を超えれば恐喝罪がありうる(昭和 30 年 10 月 14 日 最高裁) | 弁護士 |
| 誓約書・示談書を書いてもらう | 示談書に書くこと(法テラス)。強迫による意思表示は取り消せる(民法 96 条) | 弁護士・法テラス |
| 相手からの連絡や待ち伏せが怖い | 配偶者に対するつきまとい等も定める(ストーカー規制法 2 条 1 項)。警告・禁止命令(4 条・5 条) | 警察・#9110・弁護士 |
当サイトの集計で、弁護士に相談するかどうかの相談は 145 件ありました。相談先を選ぶときの確かめ方は弁護士に相談する前の記事に書きました。 法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に困っている人を対象に、弁護士・司法書士との無料の法律相談と、依頼するときの費用の立替えをしています。収入や資産などの条件があるので、対象になるかは法テラスに聞いてください。
会わない・請求しない人もいる
不倫相手に会わない人もいます。請求しない人もいます。会う・会わない、請求する・しないのどれを選んでも、先に目的を決めて弁護士に確かめておくことは変わりません。 当サイトの集計では、離婚するかどうかの相談が 97 件、再構築(やり直す)の相談が 35 件ありました。 夫婦のことを先に決めたい人は離婚するか迷うときの記事とやり直すか迷うときの記事へ。 不倫相手とのことの並びは不倫相手とのことの話題に、内容証明・示談・誓約書は内容証明・示談・誓約書の話題に置きました。