この記事は、配偶者の不倫で慰謝料の請求や離婚を進めると決めて、弁護士に頼むか、費用はどうか、どう選ぶかで迷っている人に向けたものです。先に結論を書きます。相談することと、依頼することは別です。相談を受けたあとでも、頼まずに自分で進められます。収入と資産が基準以下なら、法テラスで無料の相談を同じ問題で 3 回まで受けられ、依頼するときの費用の立替えも申し込めます。弁護士の費用は事務所ごとに違うので、見積書と委任契約書で確かめます。 数字は、当サイトが 190 日分の相談を数えたものと、法テラス・日本弁護士連合会・裁判所・日本郵便の案内です。2026 年 9 月時点の内容で、出典は記事の末尾に置きました。
弁護士への相談 145 件。いちばん多いのは費用と金額のこと
当サイトの集計で、弁護士への相談に触れた相談は 145 件でした(補正後)。多い順に並べると、いちばん多いのは「費用や金額、相場のこと」。2 番目が「何から、どの順で進めるか」です。3 番目には「相手が認めない・応じないとき」と「どこに頼むか、どう選ぶか」が、同じ件数で並びました。
「費用や金額」は語で数えていて、弁護士に払う費用を尋ねる相談も、慰謝料の額を尋ねる相談も、同じ型に入ります。この 2 つは分けられていません。 それでも、弁護士に相談するかどうかの話で、お金の心配が先に立っていることは読み取れます。慰謝料の相談でも、離婚調停の相談でも、いちばん多いのは同じく費用と金額のことでした。
並びには「気持ちをどう整理するか」も入っています。手続きの相談の中に、気持ちの迷いも書かれている。この記事は、お金と進め方の見通しを立てるための材料を、法テラス・日本弁護士連合会・裁判所の案内から集めました。気持ちが追いつかないまま進めなくてかまいません。話題ごとの並びは弁護士に相談するかの話題に置いています。
法テラスの無料法律相談は 1 回 30 分。同じ問題で 3 回まで
収入と資産が一定の基準以下なら、法テラス(日本司法支援センター)で弁護士や司法書士に無料で相談できます。1 回 30 分で、同じ問題につき 3 回まで。原則として予約が要ります。電話やオンラインで相談できる地域もあります。
基準は、家族の人数と住む地域で変わります。法テラスの案内にある表です。収入は手取りの平均月収(賞与を含む)、資産は現金と預貯金です。
| 家族の人数 | 東京都特別区・大阪市などの収入 | それ以外の地域の収入 | 資産 |
|---|---|---|---|
| 1 人 | 200,200 円 | 182,000 円 | 180 万円以下 |
| 2 人 | 276,100 円 | 251,000 円 | 250 万円以下 |
| 3 人 | 299,200 円 | 272,000 円 | 270 万円以下 |
| 4 人 | 328,900 円 | 299,000 円 | 300 万円以下 |
5 人目からは、1 人増えるごとに収入の基準が上がります(東京や大阪などは 33,000 円、それ以外は 30,000 円)。家賃や住宅ローン、医療費や教育費を払っているなど、やむを得ない事情があれば、表より多くても基準を満たすことがあります。
読み違えやすいのが、誰の収入で見るかです。ふだんは本人と配偶者の合計で見ます。ただ、離婚など配偶者が相手方になる事件では、本人の収入と資産だけで見ます。世帯の収入で考えて、対象外だと決めつけないほうがいい。不倫相手だけに慰謝料を請求する相談がどちらの見方になるかは、案内からは読めませんでした。予約のときに法テラスで確かめてください。
相談した弁護士に、そのまま依頼しなければならないわけではありません。法テラスの Q&A にそう書かれています。3 回の範囲なら、別の弁護士にも相談できます。法テラスが特定の弁護士を紹介することはなく、引き受けるかどうかは弁護士がそれぞれ決めます。
基準を超える人も使える窓口は、各地の弁護士会の法律相談センター。日本弁護士連合会の「ひまわりお悩み110番」(0570-783-110)にかけると、近くのセンターにつながります。相談はおおむね 30 分で、相談料は地域や内容で違いますが 5,500 円前後です。 どこに聞けばいいか分からないときは、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日 9 時〜21 時、土曜 9 時〜17 時。祝日・年末年始を除く)が制度や窓口を案内します。ここでは法律相談はしていません。
費用の立替えは 3 つの条件。お金が得られたときの報酬金の目安は 10% と税
相談だけで片づかず、弁護士に依頼するときのために、法テラスには費用を立て替える制度(民事法律扶助)があります。示談交渉・調停・訴訟などを頼んだときの着手金や実費を法テラスが払い、あとで分割で返します。利息等はありません。使える条件は 3 つです。
- 収入や資産が一定の基準以下であること(上の表と同じ基準。立替えでは、不動産や有価証券も資産に入ります)
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと(和解・調停・示談で解決する見込みがあるものを含む)
- 民事法律扶助の趣旨に適すること(報復目的や権利の濫用にあたる訴訟などは援助できない)
申込みから決定までは、ふつう 2 週間ほど。書類は、住民票、給与明細の直近 2 か月分などの収入の資料、資産の申告書、離婚の事件なら戸籍謄本などです。実費だけを立て替えてもらうことは、原則としてできません。
法テラスが載せている、離婚等請求事件の目安です(着手金と実費の合計)。
| 手続き | 着手金と実費の目安 |
|---|---|
| 離婚(示談交渉) | 86,000〜130,000 円 |
| 離婚(調停) | 108,000〜152,000 円 |
| 離婚(訴訟からの場合) | 266,000 円 |
慰謝料や養育費などのお金が得られたときは、報酬金の目安が、得られた額の 10% と税です(婚姻費用・養育費は 2 年分が上限)。慰謝料が 100 万円なら 110,000 円、という例が載っています。相手からお金を受け取ったときは、原則としてそのお金から立替えの分を一括で精算します。
この額は法テラスの制度を使ったときの目安で、弁護士に直接頼むときの相場ではありません。不倫相手だけに慰謝料を請求する事件が、この表のどの行に近いのかも、表からは読めません。相談のときに聞けます。
弁護士費用は事務所ごとに決まる。日弁連の規程が求める見積書と委任契約書
日本弁護士連合会は、弁護士の費用は個々の弁護士が基準を定めるもので、標準小売価格のようなものはない、と説明しています。同じ相談でも、事務所によって額が違う。当サイトは、相談に書かれた金額から相場を出すことはしていません。
費用の種類は、日弁連の説明ではおもに次のとおりです。
| 種類 | 日弁連の説明 |
|---|---|
| 法律相談料 | 相談の費用 |
| 着手金 | 依頼した段階で払う。結果に関係なく、不成功に終わっても返ってこない。報酬金の内金ではない |
| 報酬金 | 事件が成功に終わったときに、終わった段階で払う。一部の成功も含み、度合いに応じる。まったく不成功なら払わない |
| 実費・日当 | 裁判所に納める印紙代や切手代、記録の写しの費用など。出張があれば交通費・宿泊費・日当 |
日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」(会規第 68 号)は、弁護士に次のことを求めています。
- 報酬の基準を作って、事務所に備え置く(第 3 条)
- 依頼しようとする人から申し出があれば、見積書を作って渡すよう努める(第 4 条)
- 事件を引き受けるときは、報酬とそのほかの費用を説明する(第 5 条)
- 引き受けたら、報酬のことを書いた委任契約書を作る(第 5 条。法律相談や簡単な書面の作成などは除く)
見積書は「申し出があれば」です。欲しいときは、自分から頼みます。日弁連も、依頼するときは総額でどの程度の費用が要るかをよく確かめるように、と書いています。
相談の前に書き出しておくこと 5 つ
30 分は短い。法テラスの案内も、相談内容を整理した手控えメモがあると便利だとしています。緊張して話し忘れることもあるからです。紙 1 枚にまとめて持っていきます。全部そろっていなくてかまいません。
1. いつ、何があったか
気づいた日、分かったこと、配偶者と話したこと、不倫相手とのやりとり。日付を付けて、古い順に並べます。記憶があいまいなところは「あいまい」と書いておけば足ります。
2. 手元にある資料
探偵の報告書、配偶者が認めた書面、相手から届いた書類(請求書・調停の呼出状など)。持っているものの一覧を作り、写しを持っていきます。法テラスも、届いた書類は相談に持ってくるよう案内しています。 足りないかもしれないと思うものは、どう手に入れるかを相談の場で聞けます。不貞行為(肉体関係)の証拠で多く聞かれていることは不貞の証拠の話題にまとめました。
3. 何を望むか
慰謝料を請求したいのか。離婚したいのか。どちらもまだ決めていないのか。請求することと、離婚することは別です。離婚しないまま請求を考える人もいれば、やり直すと決めた人もいます。決めていないことは、そのまま伝えてかまいません。
4. 収入・資産・家族の人数
法テラスを使えるかは、手取りの平均月収、現金と預貯金(立替えでは不動産・有価証券も)、同居の家族の人数、住む地域で決まります。給与明細と通帳を見て、数字を書いておきます。立替えまで申し込むなら、住民票や直近 2 か月分の給与明細、戸籍謄本などが要ります。
5. 聞きたいこと
相談で多かったのは、費用と進め方でした。それをそのまま質問にします。「費用は総額でどのくらいか」「どの順で進めるか」「どのくらい時間がかかるか」「相手が認めない・応じないときはどうなるか」。 4 つを書いておき、答えを横にメモします。3 回目の相談や、別の弁護士の話と見比べるときに使えます。
相談の場で確かめること。途中でやめたときの清算まで
頼むかどうかを決める前に、ここは聞いておきます。右の列は、そう言える出典です。
| 確かめること | 出典の言っていること |
|---|---|
| 費用の総額と内訳(着手金・報酬金・実費) | 日弁連は、総額でどの程度要るかをよく確かめるように、としている |
| 見積書をもらえるか | 申し出があれば作って渡すよう努める(報酬規程 第 4 条) |
| 頼む範囲(内容証明まで、交渉、調停、訴訟) | 委任契約書に、引き受ける事務の範囲を書く(第 5 条)。法テラスの目安も手続きごとに額が違う |
| 報酬の決まり方と払う時期 | 委任契約書に、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期を書く(第 5 条) |
| 途中でやめるときの清算 | 委任契約書に、終わるまで契約を解除できることと、途中で終わったときの清算方法を書く(第 5 条) |
| その弁護士に法テラスを使って相談・依頼できるか | 相談したい弁護士が法テラスと契約しているかを、事前に弁護士に確かめる(法テラスの Q&A) |
その場で決めなくてかまいません。法テラスの無料相談なら、同じ問題で 3 回まで。持ち帰って、書き出したメモと見比べてから決められます。
弁護士に頼まない道。内容証明の控えを見られるのは 5 年、離婚調停の印紙は 1,200 円
相談だけ受けて、手続きは自分で進める道もあります。当サイトの集計では、内容証明・示談・誓約書についての相談が 57 件ありました(内容証明・示談・誓約書の話題)。 自分で使える手続きのうち、公的な案内で確かめられたものを並べます。
内容証明郵便
日本郵便の制度です。いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを、日本郵便が証明します。証明するのは文書を出したことで、書いた中身が正しいことではありません。一般書留にして、相手に送る文書と、その謄本(控え)2 通、封筒を窓口に出します。扱っている郵便局は限られるので、先に確かめておくと安心です。出した日から 5 年以内なら、郵便局にある謄本を見せてもらえます。インターネットで 24 時間受け付ける e内容証明もあります。 何をどう書くかは、この記事では扱いません。
家庭裁判所の調停
離婚の話し合いがまとまらない、話し合えないときは、配偶者との夫婦関係調整調停(離婚)を家庭裁判所に申し立てられます。申し立てるのは夫か妻。離婚と一緒に、財産分与や年金分割、配偶者への慰謝料も話し合えます。 費用は収入印紙 1,200 円分と連絡用の郵便切手。書類は申立書、夫婦の戸籍謄本、事情説明書などで、書式と記入例は裁判所のサイトにあります。
簡易裁判所の民事調停
お金の貸し借りなどの争いを、話し合いで解決する手続きです。裁判所は、申立てに特別の法律知識は要らないとしています。非公開で、おおむね 3 か月以内に終わるのがふつうです。ただ、離婚など家庭内の争いは、民事調停ではなく家事調停になります。
不倫相手への請求をどの手続きで申し立てるかは、請求する相手と中身で変わります。家庭裁判所の手続きを使えるかは、家事手続案内で聞けます。使えるなら、どんな申立てをするかと、要る費用・書類を説明してもらえます(1 件おおむね 20 分以内)。ただ、家事手続案内は「慰謝料はいくらもらえるか」「離婚した方がよいか」といった相談には応じていません。そこは、弁護士や法テラスの法律相談で聞くことです。簡易裁判所の民事調停は、申立用紙と記入方法の説明が簡易裁判所の窓口にあります。
いまの状況ごとの行き先
書き出したメモを持って、どこに行くかの表です。
| いまの状況 | 行き先 |
|---|---|
| 収入と資産が基準以下かもしれない | 法テラスの無料法律相談(依頼するときは費用の立替えも) |
| 基準を超える。近くで弁護士に相談したい | 弁護士会の法律相談センター(ひまわりお悩み110番 0570-783-110)、または弁護士の事務所 |
| どこに聞けばいいか分からない | 法テラス・サポートダイヤル(0570-078374) |
| 自分で調停を申し立てたい | 家庭裁判所の家事手続案内(家庭裁判所の手続き)、簡易裁判所の窓口(民事調停) |
| 自分で内容証明を送りたい | 内容証明を扱う郵便局、e内容証明 |
| 離婚するか、まだ決めていない | 離婚するかどうかの話題、再構築(やり直す)の話題 |
| 眠れない、食べられない日が続いている | 心療内科・精神科、厚生労働省「まもろうよ こころ」の電話・SNS の相談窓口 |
どの行から始めてもかまいません。法テラスで相談してから、自分で調停を申し立てることもできる。弁護士会で相談を受けたあとに、事務所に依頼する道もあります。行き先を 1 つに決めてから動く必要はありません。