この記事は、配偶者の不倫の証拠がそろい、慰謝料を不倫相手に請求するか、配偶者にか、両方にかで迷っている人に向けたものです。先に結論を書きます。 法律のうえでは、不倫相手と配偶者は 2 人で 1 つの損害に責任を負う形です。ただし前提があります。不倫相手が、相手が既婚と知っていたか、知ることができたこと。その時に夫婦の関係が破綻していなかったこと(昭和 54 年・平成 8 年の最高裁判決)。期限は、損害と相手を知った時から 3 年。 離婚そのものの慰謝料は、不倫相手には原則として請求できないと最高裁が示しています。相談の件数は、当サイトが 2026 年 3 月 21 日から 2026 年 9 月 26 日までの投稿を数えたもので、2026 年 9 月時点の値です。条文と判決は原文で確かめました。
慰謝料の相談 138 件で、いちばん多いのは費用や金額のこと
当サイトの集計で、慰謝料についての相談は 138 件でした。無作為に抜いた 30 件を AI(Claude)の 2 系統で 1 件ずつ判定し、判定がそろった件のうち本当に慰謝料の相談だった割合(適合率、約 79%)で補正した数です。人の目では確かめていません。 いちばん多い悩みの型は「費用や金額、相場のこと」。2 番目の「気持ちをどう整理するか」と 3 番目の「何から、どの順で進めるか」は、ほぼ同じ件数で並びます。3 番目とほぼ同じ件数で、4 番目に「相手が認めない・応じないとき」が来ます。
金額の話がいちばん多い。それでも額は書きません。相談に出てくる「万円」が、請求した額か、合意した額か、弁護士の費用かを、語だけでは分けられないからです。 法テラスも、不倫相手に対する慰謝料の額には「形式的にいくらという目安や相場があるわけではありません」と答えています。額の見通しは、事情を話したうえで弁護士に聞いてください。
不倫相手の相談 96 件では、気持ちのことが先に来る
不倫相手とのことを相談した投稿は 96 件。いちばん多いのは「気持ちをどう整理するか」で、「費用や金額、相場のこと」はその次でした。 慰謝料の相談では金額が先。不倫相手の相談では気持ちが先です。請求を考えながら、相手への気持ちをどう扱うかで迷っている人がいる、と当サイトは読んでいます。
眠れない、食べられない、という状態が続くこともあります。そのときは体が先です。心療内科や精神科、自治体の心の相談窓口があります。 厚生労働省が案内する「こころの健康相談統一ダイヤル」は 0570-064-556 で、受け付ける曜日と時間は都道府県ごとに違い、電話のほかに SNS で相談する方法も案内されています。
請求の根拠は民法 709 条と 710 条
慰謝料の請求の根拠は、民法の不法行為の条文。判決や法テラスの説明では、法律で問題になる不倫を「不貞行為(肉体関係)」と呼んでいます。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法 709 条)
710 条は、財産以外の損害にも賠償がいると定める条文です。心の苦痛への賠償、それが慰謝料です。
不倫相手の責任については、昭和 54 年 3 月 30 日の最高裁判決があります。配偶者と肉体関係を持った第三者は「故意又は過失がある限り」、もう一方の配偶者の権利を侵害し、精神上の苦痛を慰謝する義務がある、という内容です。 法テラスの説明も同じ筋で、不倫相手が、相手に配偶者がいると知っていた場合と、注意すれば知ることができた場合を挙げています。
逆の場合もあります。平成 8 年 3 月 26 日の最高裁判決は、肉体関係を持った時に夫婦の関係が「既に破綻していた」なら、特段の事情がない限り第三者は責任を負わない、としました。 守られているのは「婚姻共同生活の平和の維持」という利益だからです。別居が長かったなど、自分の件がどちらに当たるかは、この記事では言い切れません。
不倫相手と配偶者は 2 人で責任を負う。719 条と求償
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。(民法 719 条 1 項)
平成 6 年 11 月 24 日の最高裁判決は、配偶者と不倫相手が負う賠償を、この 719 条の共同不法行為の責任として扱っています。法テラスも、配偶者と不倫相手に「連帯して」慰謝料を請求できると説明しています。
1 つの損害を、2 人が一緒に負う形です。両方に請求するか、どちらか一方にするかは、請求する側が決めます。2 人から別々に、同じ損害の全額を 1 回ずつ受け取る形にはなりません。
ここで出てくるのが求償です。2 人で負う責任を 1 人が払ったとき、もう 1 人にその負担部分を求めること。民法 442 条は、連帯して債務を負う人の 1 人が払ったとき、払った額が自分の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、ほかの人に「各自の負担部分に応じた額」を求められると定めています。 不倫相手だけに請求して払ってもらうと、不倫相手があなたの配偶者に負担分を求める、という流れがありえます。 ただ、平成 6 年の判決は、不倫相手と配偶者の債務を「連帯債務ではない」としていました。改正後に、この 442 条が 2 人の間の求償にそのまま及ぶかは、条文だけでは決まりません。弁護士に確かめてください。
迷いやすいのはここです。夫婦を続けるなら、配偶者への求償は、自分と同じ家計から出ていくお金になります。W 不倫(不倫相手にも配偶者がいる)なら、相手の配偶者があなたの配偶者に請求してくることもありえます。 当サイトでは、求償と W 不倫の相談は件数が少なく、話題として公開する条件に届いていません。進め方は弁護士に聞いてください。
時効は、損害と相手を知った時から 3 年
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。(民法 724 条)
起算点は 2 つです。不倫があったことと相手が誰かを知った時から 3 年、不貞行為の時から 20 年。どちらかを過ぎたあとで相手に時効を主張されると、請求できなくなります(時効は主張されて初めて効く。145 条)。 配偶者への請求は別の扱いです。民法 159 条により、夫婦の間の権利は、婚姻が続く間と、離婚などで婚姻が解消した時から 6 か月は、時効が完成しません。 いつが「知った時」に当たるかは事情で変わります。日付は弁護士と一緒に確かめてください。
期限が近いときの仕組みが、民法 150 条の催告(裁判所を通さずに支払いを求めること)です。催告から 6 か月は時効が完成しない、と定めています。法テラスの説明では、内容証明郵便で請求書を送ることがこの催告に当たります。 ただし、その 6 か月の間にもう一度催告しても、猶予は延びません。裁判や調停、支払督促を起こせば、その手続きが終わるまで時効は完成しません(147 条)。判決などで権利が確定すれば、時効はそこから新たに進みます。取り下げなどで確定しないまま終わったときは、終わってから 6 か月までです。
離婚そのものの慰謝料は別。平成 31 年の最高裁判決
平成 31 年 2 月 19 日の最高裁判決は、妻の不倫相手に「離婚に伴う慰謝料」を求めた夫の請求を認めませんでした。判決はこう述べています。
協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
不倫相手が、夫婦を離婚させようとして婚姻関係に不当に干渉したなどの特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料は請求できない。これが判決の結論です。 判決は、不貞行為そのものを理由とする責任を負う場合があることは否定していません。不倫相手に請求するときは、何への慰謝料なのかで扱いが変わります。
離婚しないまま請求する道はあるのか。709 条にも昭和 54 年の判決にも、請求の条件として離婚を挙げる言葉はありません。離婚を決めていなくても、不貞行為への慰謝料を請求する道はありえます。
内容証明・示談・誓約書の相談 57 件
当サイトの集計で、内容証明・示談・誓約書の相談は 57 件でした。悩みの型ごとの件数が公開の下限に届かないので、どの悩みが多いかの並びは出していません。
内容証明は、日本郵便の説明では、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを、差出人が作った謄本で日本郵便が証明する制度です。証明するのは、文書があったことだけ。 中身が正しいかは別です。一般書留で送り、加算料金は 480 円(2 枚目から 290 円増し)です。差出人は、出した日から 5 年のあいだ、郵便局に残る謄本の閲覧を求められます。
示談は、法テラスの説明では、裁判によらず当事者の話し合いで、支払うかどうかや金額・方法を合意して解決することです。合意書(示談書)には、当事者の住所と氏名、作った日、何の件か、支払いの額・期日・方法、守られないときの取り決めを書く、とあります。 分割で払ってもらう約束なら、強制執行を認める文言を入れた公正証書にする方法も示されています。誓約書の決まった書き方を示す公的な資料は、当サイトでは確かめられていません。
配偶者との合意の文言にも気をつけたい点があります。平成 6 年の判決では、夫婦の離婚の調停に「互いに金銭その他一切の請求をしない」という条項がありました。最高裁は、当時の 437 条(連帯債務者の 1 人への免除がほかの人にも効く規定)はこの場合に当てはまらないとし、調停の条項は配偶者の分だけを免除したものと読みました。不倫相手の支払いは減りませんでした。 437 条はその後の改正で内容が変わり、今は 441 条で、1 人への免除は原則としてほかの人に効きません(別段の意思表示があれば別)。また 445 条は、1 人が免除されても、ほかの人はその 1 人に 442 条の求償ができると定めています。配偶者を免除しても、不倫相手から配偶者への求償は止まらない形です。夫婦を続けるなら、同じ家計の話になります。これらの条文が不倫の件にそのまま当てはまるかも含めて、配偶者との合意が不倫相手への請求にどう響くかは、合意する前に弁護士に見てもらってください。
請求の前に確かめる 4 項目
証拠がそろっていることを前提に、進める順に並べました。
1. 誰に請求するか。不倫相手か、配偶者か、両方か
まず、不倫相手が相手の既婚を知っていたか、知ることができたか。その時に夫婦の関係が破綻していなかったか。ここが前提です。そのうえで、2 人は連帯して責任を負う関係です。不倫相手だけに請求すると、配偶者への求償が起こりえます。夫婦を続けるか別れるかで、向く形が違います。
2. 期限はいつか。知った日から 3 年を数えたか
不倫と相手を知った日を、メモや記録で確かめておきます。近いなら、内容証明による催告で 6 か月の猶予があります。猶予は 1 回だけです。その 6 か月のあいだに、裁判や調停を起こす必要があります。配偶者への請求は、婚姻中と離婚から 6 か月は時効が完成しません。
3. 何への慰謝料か。不貞行為そのものか、離婚か
不倫相手に離婚そのものの慰謝料を求められるのは、平成 31 年の判決で、特段の事情がある場合に限られました。同じ判決は、夫婦の一方が他方に離婚の慰謝料を求めることはできる、と前置きしています。2 つは分けて考えます。
4. どう伝え、どう残すか。内容証明・示談書・公正証書
請求を伝えたことを残すなら内容証明。合意したら示談書に、分割払いなら公正証書に。相手が認めない・応じないときは、調停や裁判に進む道もあります。 慰謝料の相談では、この「相手が認めない・応じないとき」が 3 番目とほぼ同じ件数で、4 番目に来ていました。
| 迷っていること | 原文が言っていること | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 誰に請求するか | 共同の不法行為は各自が連帯して責任を負う(民法 719 条) | 弁護士・法テラス |
| 不倫相手が払ったあとは | 連帯債務者は負担部分に応じた額を求められる(民法 442 条、求償)。不倫の件への当てはめは要確認 | 弁護士 |
| いつまでに | 知った時から 3 年、行為の時から 20 年(民法 724 条)。配偶者へは婚姻中と解消から 6 か月は完成しない(159 条) | 弁護士 |
| 離婚の慰謝料を不倫相手に | 特段の事情がない限り請求できない(平成 31 年 2 月 19 日 最高裁) | 弁護士 |
| 夫婦の関係が壊れていた | 既に破綻していたら原則として責任なし(平成 8 年 3 月 26 日 最高裁) | 弁護士 |
| 請求を伝えたことを残す | 内容証明は文書の存在を証明する(日本郵便)。催告から 6 か月は時効が完成しない(民法 150 条) | 郵便局・弁護士 |
弁護士への相談 145 件。相談先は弁護士と法テラス
当サイトの集計で、弁護士に相談するかどうかの相談は 145 件。ここでもいちばん多いのは「費用や金額、相場のこと」でした。 弁護士の費用の話か、慰謝料の額の話かは、語だけでは分けていません。
法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に困っている人を対象に、弁護士・司法書士との無料の法律相談をしています。依頼するときの費用の立替えもあります。ただし条件つきです。 収入や資産が一定の基準以下であることなどで、基準は住む地域と家族の人数で違います。自分が対象になるかは、法テラスに聞いてください。
請求することと、離婚することは別
慰謝料を請求しても、離婚しなければならないわけではありません。請求しない人もいます。当サイトの集計では、離婚するかどうかの相談が 97 件、再構築(やり直す)の相談が 35 件ありました。 離婚の条件(親権・養育費・財産分与など)だけ先に知っておく人もいます。並びは離婚するかどうかの話題と再構築(やり直す)の話題に置きました。
慰謝料の相談の並びは慰謝料の話題に、不倫相手とのことは不倫相手とのことの話題にあります。