この記事は、夫(妻)の不倫を疑っている人、知ったばかりの人に向けたものです。手元の LINE や写真が証拠になるのか、何を集めればよいのかで迷っている段階を想定しています。 先に結論を書きます。証拠になるかどうかの判断は、弁護士に任せてよい。その前にできるのは、自分が何を決めたいのかと、手元に何があるかを書き出すことです。 集め方の中には、法律で禁じられているものがあります。そこは条文の原文を開いて確かめました。内容は 2026 年 9 月時点のものです。
不貞の証拠の相談 208 件、いちばん多いのは「進め方」と「気持ち」
当サイトが集計した不貞の証拠の相談は 208 件でした。不貞は、法律の言葉で不貞行為(肉体関係)のことです。悩みの型でいちばん多いのは「何から、どの順で進めるか」と「気持ちをどう整理するか」で、この 2 つは同じ件数で並びます。 その次が「相手が認めない・応じないとき」。
「これで証拠になるのか」は、上の図に出した 7 種類の中で最も下の順位でした。手元の記録が証拠になるかより、何から手をつけるか、気持ちをどうするかを聞く相談の方が多い。並びから読めるのはそこまでです。
4〜6 番目には「どこに頼むか、どう選ぶか」「費用や金額、相場のこと」「法律のうえでできるのか」が並びます。頼む先と費用は、探偵と調査の話題(118 件)では上の 2 つで、ほぼ同じ件数です。 並びの全体は不貞の証拠の話題と探偵と調査の話題に置きました。
LINE・スマホの記録の相談 76 件、多いのは「相手が認めない」と「進め方」
LINE の画面、スクリーンショット、位置情報、録音などの話題は 76 件。多いのは「相手が認めない・応じないとき」と「何から、どの順で進めるか」で、ほぼ同じ件数でした。 画面を見せても認めない。話し合いに応じない。その先をどう進めるかで迷っている相談です。
記録を突きつける前に、弁護士に見せる方が順番としては確かです。集め方によっては、こちらが法律に触れているおそれもあるからです(下の節)。 話題の並びはLINE やスマホの記録の話題にあります。
民法の「不貞な行為」は、昭和 48 年の最高裁判決が意味を示している
不貞という言葉は、民法 770 条に出てきます。夫婦の一方が離婚の訴えを起こせる場合を 4 つに限った条文で、その 1 号です。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
この「不貞な行為」が何を指すかを、最高裁判所の昭和 48 年 11 月 15 日の判決(昭和 48 年(オ)第 318 号)が示しています。判決の要旨はこうです。
民法七七〇条一項一号の不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。
裁判所の説明の中心は、性的関係です。手元の LINE や写真がそこをどこまで示すかは、中身と、ほかにある記録の組み合わせで変わります。この記事では「足りる」「足りない」を言いません。判断するのは弁護士、最後は裁判所です。
同じ 770 条の 2 項には、1 号に当たる事情があっても、裁判所が一切の事情を考えて婚姻を続けるのが相当と認めれば、離婚の請求を退けられるという定めもあります。 不貞があれば必ず離婚が認められる、という作りの条文ではありません。
集め方で違法になりうること
証拠の相談には、GPS やスマホの中を見る話も出てきます。やり方によっては、法律に触れます。 当サイトは 2 つの法律の条文を e-Gov 法令検索の原文で確かめました(2026 年 9 月時点)。ここでは手順は書きません。何が禁じられているかだけを書きます。
位置情報(ストーカー規制法)
ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)の 2 条 3 項は、「位置情報無承諾取得等」を定めています。承諾を得ずに相手が持つ装置の位置情報を取ること、承諾を得ずに相手の持ち物に装置を取り付けることなどです。条文の 3 号はこう書いています。
その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置又は位置特定用識別情報送信装置(以下この号において「位置情報記録・送信装置等」という。)を取り付けること(後略)
3 条は、これで相手に身体の安全、住居などの平穏や名誉が害される、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせることを禁じています。位置情報無承諾取得等を繰り返すと、ストーカー行為になります(2 条 4 項)。18 条の罰則は 1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金です。 この法律は、行為に「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」があることを求めています。証拠を取るつもりで付けた場合にこれに当たるかは、条文には書かれていません。 配偶者を相手から外す定めもありません。付けることを考えているなら、まず弁護士に聞いてください。
スマホやアカウント(不正アクセス禁止法)
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)の 3 条は短い条文です。
何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
2 条 4 項 1 号は、電気通信回線(インターネットなど)を通じて、他人の ID・パスワードなどの識別符号を入力し、アクセス制御で制限された利用をできる状態にすることを不正アクセス行為としています(管理者や本人の承諾がある場合などを除く)。 違反すると 11 条で 3 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金。4 条は、不正アクセスに使う目的で他人のパスワードなどを手に入れることも禁じています。 ここにも、配偶者を除く定めはありません。どの行為がこれに当たるかはやり方で変わるので、自分で決めずに弁護士に聞いてください。
相談の前に書き出す 4 項目
順番は、上の相談で多かった順です。全部埋めなくてかまいません。紙 1 枚で足ります。弁護士でも法テラスでも、持っていけば話が早く進みます。
1. 何を決めたいのか(何から、どの順で進めるか)
いちばん多い迷いです。進める順は、何をしたいかで変わります。不倫相手に請求したいのか、離婚を考えているのか、やり直したいのか、まだ決めていないのか。 決まっていなければ「まだ決めていない」と書けばよい。それも答えの 1 つです。
2. 今の気持ちと、体の具合
同じ件数で並ぶもう 1 つの迷いです。眠れない、食べられない日が続くなら、証拠より先に自分のことを。心療内科・精神科にかかることも、自治体の心の相談窓口に話すこともできます。 厚生労働省は、電話をかけた地域の公的な相談窓口につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」を案内しています。 気持ちの整理の話題は気持ちと心身の不調にまとめました。
3. 相手に話したか、どう答えたか
3 番目は、相手が認めない・応じないときの迷いでした。もう話したのなら、いつ、何を見せて、何と言われたかを書いておきます。まだ話していないなら、そう書きます。 話したかどうかで、弁護士が勧める進め方は変わることがあります。
4. 手元にある記録と、どう手に入れたか
最後が「これで証拠になるのか」にあたる部分です。LINE の画面、写真、カードの明細など、手元にあるものを並べ、それぞれいつ、どうやって手に入れたかを 1 行ずつ添えます。 手に入れ方を書くのは、上の節の法律に触れていないかを弁護士に確かめてもらうためです。これから集めるものは、この紙を見てもらってから決めても遅くありません。
法テラスの無料相談は 1 回 30 分、同じ問題で 3 回まで
弁護士への相談は、法律事務所に直接でも、法テラス(日本司法支援センター)の無料法律相談でもできます。 法テラスの無料相談は、収入と資産が一定の基準以下の人が対象です。収入と資産は原則として本人と配偶者の合計で見ますが、離婚など配偶者が相手になる件では本人の分だけで判断すると法テラスの案内に書かれています。 1 回 30 分、同じ問題につき 3 回まで。原則として予約が要ります。
| 聞きたいこと | 行き先 |
|---|---|
| 手元の記録で不貞を示せるか | 弁護士(法テラスの無料相談を含む) |
| 集め方が法律に触れていないか、これからの集め方 | 弁護士(法テラスの無料相談を含む) |
| 調査を頼むかどうか、その費用 | 探偵の相談・見積もり。頼まないことも選べる |
| 請求するか、離婚するか、その順番 | 弁護士(法テラスの無料相談を含む) |
| 眠れない、気持ちがもたない | 心療内科・精神科、こころの健康相談統一ダイヤル |
当サイトは、探偵社や法律事務所を名前ごとに数えていません。どこに頼むかは、ご自身で確かめて決めてください。
請求することと、離婚することは別
証拠を集めるのは、離婚するためとは限りません。民法で、離婚の訴えの理由を定めた 770 条と、損害賠償を定めた 709 条・710 条は別の条文です。 法テラスの説明でも、配偶者と不倫相手に慰謝料を請求できる場合を、相手が配偶者のいることを知りながら、または注意すれば知ることができたのに、肉体関係を持った場合、と説明していて、離婚していることは挙げていません。 請求するかどうかと、離婚するかどうかは、別々に決めてかまいません。
やり直すと決めた人も、まだ決めない人もいます。どれも同じ重さの選び方です。やり直す人の相談は再構築(やり直す)の話題に、離婚するかどうかで迷っている人の相談は離婚するかどうかの話題にあります。